SHORAKUSHA

終わりがないフィルムのように続く、ある風景の備忘録

板宿

2019年6月26日訪問

商店街と総合スーパーのゆるやかな共存に感じる「神戸」

 

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板宿は、神戸市須磨区にある山陽電鉄本線神戸市営地下鉄西神山手線の駅。須磨区役所なども位置する須磨区の地域拠点になっている。

 

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戦前から神戸市電山陽電車が接続する交通の拠点で、その山陽電車は1995年まで地上を走行し、駅も地上にあった。

 

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線路が商店街と踏切で直交する形で、踏切のぎりぎりまでホームがあるという、東急池上線戸越銀座駅や、京阪電車伏見桃山駅のような雰囲気だったらしい。

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神戸で1995年……といえば、阪神淡路大震災による被災が真っ先に思い浮かぶが、この区間はもともと連続立体交差事業で地下化工事が行われている場所であった。その完成間近に発生したのが阪神淡路大震災

 

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地上駅舎も被災したため、この際地下駅舎の開業を前倒ししてしまえということで、連立事業が図らずも迅速な復興の足掛かりになったのだそう。線路跡は道路が拡幅され、4車線道路になっている。線路は道路左側あたりを走行していたらしい。

 

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地上に駅があった頃をしのばせる山陽電鉄系のそば屋「山陽そば」がアーケード入ってすぐの左側に店舗を構えている。

 

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板宿はすぐ近くを流れている妙法寺川の流路変更による耕地整理から近隣商店街としての賑わいが始まったらしい。神戸の商店街として有名な湊川商店街も同様の経緯があり、山が近く、急な河川が多いために治水行政が大きな意味を持つ神戸らしい起源のように思う。

 

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アーケードは「田」の字に組まれており、西のタテが基幹の「板宿本通商店街」。南のヨコが「銀映通」。

 

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真ん中の「十」はそれぞれ板宿「東」「西」「南」市場という通り名が付く。名前の通りアーケード群の内側はちょっとディープな「市場感」があるのが楽しい。

北方向だけ「板宿公認市場」という名前になっているが工事(取り壊し?)のためか立ち入れなかった。

 

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「田」の北のヨコ、「板宿センター街」。

 

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「板宿本通」はセンター街を過ぎた後ももう一区画分伸びて通りに突き当たって終わる。

 

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その突き当たったところにある再開発ビル「ビバタウン板宿」。かつては「板宿本通商店街」がさらに奥へと延びていたところを再開発して完成した施設で、ダイエーを核に地権者の専門店をいくつか配している。ダイエーは現在「イオンフードスタイル」という名前に代わり洒落こんでいるらしい。

 

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つまり、駅から商店街を通り抜けた先にダイエー(ビバタウン板宿)がある。板宿はそういうまちの作りになっている。

 

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帰りは「田」の東のタテに位置する「新町通」を歩いて戻る。こちらはビバタウンと軸線がずれているせいか静かな雰囲気。

 

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総合スーパー華やかなりし時代、総合スーパーは商店街にとって敵であったと思う。多くの地域ではそうであり、実際総合スーパーや大手資本の食品スーパーに客を奪われていった個人商店は数知れないと思う。

 

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でも板宿はなにやら違う。いや…厳密に言えば神戸の商店街そのものが「違う」ように思う。そこには緩やかな共存があり、ダイエーは地域を制するものでなく、多様な選択肢の一つとして存在している。商店街のパン屋さんが好きで利用する人もいるし、ダイエーのパンが好きでそこで買う人もいる。それでええやんと、そんな共存共栄の関係が、しばしば神戸の商店街では目撃することがある。

勝ち負けというより、それぞれがそれぞれでいいじゃない。こじんまりと整理され、わかりやすい「まちの作り」をしている板宿は、そういう「神戸らしさ」をストレートに感じることができる場所なのかもしれない。