SHORAKUSHA

終わりがないフィルムのように続く、ある風景の備忘録

大場川水門/京成バス

東京都葛飾区にある京成バスの折返場。

 

金町駅北口からジグザグと進路を北へ20分。次第に畑の混じる景色へと変わっていく。そんな景色に23区内らしからぬのどかさを感じながらバスに揺られていると、東を大場川に、西を中川に挟まれたどん詰まりのところで終点「大場川水門」となる。

 

葛飾区の最北端に位置し、名前の通り折返場から堤防を上がるとすぐ目の前に大きな水門が現れる。

水門にかかる人道橋を渡った先は埼玉県八潮市である。

 

 

大場川水門へ至る路線「金62」系統は、交通不便地域解消のために区や住民の要請によって1980年代にできた路線らしい。当初は少し手前の西水元三丁目で折り返していたが、開業の5年後に大場川水門へ延伸されている。

経緯を考えるに最初から大場川水門まで路線引けばよかったのでは…と思うのだが、なにか事情があったのだろうか。例えば折り返しスペースが当初は確保できなかったとか…

ちなみに現在も約半数の便が西水元三丁目で折り返しており、こちらにも折返場があるため、距離にして600m弱のところに2か所も折返場があることになる。それだったら全便大場川水門まで走らせた方が効率良いのでは…と思わなくもないが、これもまた、いろいろと想像が膨らむ。

 

 

バス停のベンチではおばあちゃん方が数人で世間話に花を咲かせている。

ちゃんとバスが使われている感じがしていいなぁ…と思ったが、その横でちんまりと立って待っていたら

 

「おにーちゃん!わたしたち乗んないから!ワハハ!」

 

よく見るとおばあちゃんの乳母車にはおとなしい犬がこちらをじつと見ていて、乗るワケは当然ないのであった。

 

 

バスは部外者のわたしだけを載せ、金町へと去った。

 

折返場には、またおばあちゃんの談笑だけが残った。