2018年11月24日訪問
「ブランド」を捨てた方が楽になれるぞ!
名古屋市中心部から東へ向かう地下鉄東山線は、終盤になると高架へと顔を出し、ごろごろと進む。
終着地の藤が丘は、名古屋市名東区に位置する名古屋の「郊外」拠点とされるまちだ。
駅設備と市営バスターミナルは一体化した構造。
藤が丘駅西側。バスターミナル(駅設備)の直上には市営住宅。近代的なクセして「市営藤が丘荘」という名前に味わいを感じる。左の団地はURの「藤が丘市街地住宅」。
東側へ。
藤が丘駅東側にある藤が丘エフ。食品売場と飲食の複合店舗だが3F以上はコインパーキングであり、商業施設としての規模は小さい。近年コインパーキング業界で存在感が高まっている名鉄協商による運営らしい。
藤が丘には地下鉄東山線以外にも長久手方面に延びるリニモの始発駅にもなっている。
駅東側はエフを囲うように一方通行路が通り、その周囲を公団の市街地住宅が囲う。駅を中心にして団地が「壁」のようになっており、景色が広がらない(からまちのイメージが広がらない)のも藤が丘の特徴といえるかもしれない。
「建物密度」が高くてとにかく見通しがきかない……のはずなのに、エフのほかにめぼしい商業施設といえば左奥に見える「マックスバリュ」くらい。
藤が丘エフがその圧倒的有利な立地で総合スーパーではなく上層部コインパーキングで微妙な規模の施設になってしまうのは車社会の名古屋故という感じがする。
このそこはかとなく感じる「物足りなさ」はきっと多くの人にとって藤が丘が「通過点」でしかないからなのかもしれない。
バスは長久手や瀬戸方面へいく便が中心。名古屋都心部との交通結節点としては結構厚みがある。
でもどうしてももっとスーパーや商店があっていいはずなのに……という感触が藤が丘の「個性」のように思ったりもする。
一歩裏手に入ると団地。
駅から5分も歩けばこんな景観に出会える。この商業地の広がらなさは完全に新興住宅地の"それ"だ。
なんか藤が丘にはうっかり団地商店街の駅前に駅やバスターミナルを作ったら地元の人のための商店街の商圏をはるかに上回る知名度と人の波を生み出してしまった!みたいな面白さがある。
知名度はしっかりある。路線バスも集まってきて交通結節点としての機能も十分。でもなぜか商業だけが弱い。藤が丘の面白さであり、また課題でもあるのだろう。
ほら、駅前から少し歩けばこんなにいい雰囲気のマンション街だってある。
住宅地としては優秀なのだ。ただ、地下鉄の終点である「知名度」や交通結節点としての機能が果たされているだけに、それが微妙にこのまちを見るにあたって邪魔をする。
ひょっとすると我々は藤が丘に対して、過度な「期待」をしすぎているのかもしれない…………それは思ったよりしょぼいよ!という意味ではなく、藤が丘という「まち」に「名古屋東郊の郊外拠点としての期待に応えさせよう」としている強制の問題だ(今回は妙にコムズカシイね!)。我々がそうイメージすることで、藤が丘は「名古屋東郊の郊外拠点」たらしめようと背伸びをする。でも、無理をしなくても、藤が丘のらしさを探す道はたくさんある。
我々まちの趣味者(やひょっとすると都市計画や行政の人々も)はあまりにも藤が丘に「拠点性」を求めすぎてしまった。これだけ外からつけられた「ブランド」に苦労しているまちもそうは多くまい。鉄道路線の「行先」の意味の重さでもある。
もう無理をしなくてもいいよ。「藤が丘」は藤が丘のみちがきっとある。