2018年4月14日訪問
"開かれた"再開発がもたらすまちの「やさしい」成長
石神井公園は、東京都練馬区にある西武池袋線の駅。池袋から出た急行電車がはじめて停車する駅だ。
天井の高い高架駅。
改札口は中央口と西口の2か所。
西口改札目の前にある食品館イトーヨーカドー石神井公園店。高架下にしては規模もあり、この立地にあるとだいぶ重宝しそうです。
石神井公園は2015年に完了した連続立体交差化事業によって高架駅化され、高架下や駅周辺は「エミナード石神井公園」としてショッピングゾーンが形成されている。
石神井公園は、西武グループの中でも沿線を代表する「洗練されたイメージを牽引するエリア」「優良な住宅地としての確固たる地位の確立を図るエリア」として位置付けられており、かなり力の入った整備が行われた。
西口から南側へと出る。目の前に立つマンションも「エミリブ石神井公園」という西武が一連の事業の中で賃貸分譲したマンションだ。
西側へ少し歩いてみる。
高架の北側に出る。
高架脇にあるライフ石神井公園店。
こんな庶民的なお店も残っているところに「練馬」を感じてよい。
駅側へ戻る。駅北側の歩道も「エミナード石神井公園」の一部としてオープンエアの歩行者専用道路が整備されており、左右にファッションテナントが並ぶ。
普通であれば高架下か建物の中に収めてしまいそうな空間だが、「屋根がない」という是非はあれど、再開発地区のテナントもなんだかまちに開かれているような印象があってよい。
中央口側に出てきました。
駅前広場は驚きの高架下大空間。普通であれば商業施設やバスターミナルを収めてしまいがちなところを歩行者空間として確保したのは正直言ってすごい。
北口にある石神井公園ピアレス。西武が手掛ける一連の再開発とは関係がなく、2002年に竣工した商業施設+タワマンのビル。
キーテナントはクイーンズ伊勢丹。八重洲ブックセンターなども入居しているが商業施設としての規模は小さい。
ピアレスの裏手には東へ「西友通り商店街」が伸びている。
庶民的な雰囲気になる。
改装されていないオールドスタイルの西友石神井公園店。ここは西武沿線なんだぜというのをしっかり主張してくる。
きっとピアレスができるずっと前から石神井のまちを支えてきたのだと思う。
駅南側へ出てきました。
駅南側にも西武の再開発が及んでいる。写真のマンションは先ほど裏側から眺めた「エミリブ石神井公園」。
南口は北口以上に既存の市街地との差異がドラスティックに見られる。
いきなり商店街。
しかも南口バスターミナルへ入るバス通りでもあるのだ。
いつか再開発の手が入ってしまいそうで怖いことこの上ないが、この西武に呑み込まれるようで呑み込まれない多様性が石神井の面白いところ。
商店街を西へてくてく歩いていくと、次第に石神井の閑静な住宅地へと入っていく。
さらにその通りから南へ少し歩くと、駅名の由来にもなった「石神井公園」が見えてくる。
石神井公園の石神井池北岸はちょっとした高級住宅街になっている。
池とともにある暮らしも、ゆたかでみずみずしくていいな~と思っていた。
まちと池、のいい関係。
石神井公園は高架化というきっかけがあって、駅周辺が再開発されることとなった。
しかし敢えてそうしたのか、それとも敢え無くそうなったのか、面的な大規模開発は行われず、高架下や高架側道、駅横をスポット的に手を入れることで都市のリノベーションを完成させる手をとった。
再開発となると、ハコモノの中に"閉じた"形でまちの機能が配置されて、どこか外のまちと隔絶してしまうことがよくある。けれど、石神井公園は結果的に再開発を"開かれた"空間で行うことで、外のまちと上手になじみ、かつ必要以上の影響を外に与えないようになっている。西武は石神井公園を「住んでいてよかった街、住んでみたくなる街へ」 というテーマで整備を行ったのだが、この「住んでいてよかった」というところこそが、カギとなるのだろう。再開発前の石神井公園を知っている人間、つまり「外」の人間にとってもよかったと思ってもらえる、まちを「ちょっと後押し」する再開発。
「劇的な変化」「問題の抜本的改善」のための再開発ではない、石神井公園のような「まちへの小さな一押し」として、再開発はあるべきなのかもしれない。