SHORAKUSHA

終わりがないフィルムのように続く、ある風景の備忘録

鹿児島中央

2019年11月15日訪問

さらなるポテンシャルを秘めた鹿児島の"陸の玄関口"

 

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鹿児島中央駅は鹿児島県鹿児島市にある鹿児島の代表駅となるターミナル。JR線のほか路面電車も駅前を通っており、かねてからの商業中心である天文館方面へは路面電車やバスを乗り継ぐ形となる。

九州新幹線が部分開業した2004年までは「西鹿児島駅」という名称であったこともまだ記憶に新しいが、この頃新幹線の開業に合わせる形で大規模な整備が行われ、大きな観覧車がランドマークの駅ビル「アミュプラザ鹿児島」が開業したのもこの年(2004年)のことだった。駅ビルの開業は鹿児島中央駅周辺の地位を大きく向上させることとなり、この手法はのちに博多駅大分駅、そして現在事業中の宮崎や熊本などへと水平展開されていくことになる。

 

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 そんな鹿児島中央駅の周辺では九州新幹線バブルを受けてビルの建て替えや再開発事業がいくつか行われている。現在も交通広場南側の区画で大規模な再開発事業が進む。

 

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南国殖産(鹿児島の路線バス事業者・南国交通の親会社)・三菱地所レジデンス・大京穴吹工務店が参画しており、低層部に商業施設とホール、上層部が三菱地所によるタワーマンションが分譲される予定になっている。

後に述べるが南国殖産鹿児島中央駅の大地主とも言えそうな存在で、この再開発以外にも近隣地で2か所近代的な再開発ビルを建設している。

 

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この再開発は「中央駅一番街商店街」の入り口をふさぐような形で行われており、一番街へと入るには迂回を余儀なくされる。

 

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電車通り側(東側)の入り口から入る。

 

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f:id:kazemina:20200523201000j:plainあくまでも地元向けの商店が集まる雰囲気。

 

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左右には別の再開発事業で完成した「アエールプラザ」「アエールタワー」もあり、商店街の北側(鹿児島中央駅側)は事業中の再開発事業を含め、将来的に3棟の再開発ビルで囲われることになる。

 

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振り返ってみると思った以上に「途切れ」感。

 

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さらに一本西側(線路側)のベル通り。

 

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こちらは観光客向け主体の飲み屋街といった感じか。

 

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鹿児島中央駅と向かい合うようにして建つ2棟。左(北)は再開発によるキャンセビル(1999年開業・イオン鹿児島中央店)、右(南)は南国殖産による鹿児島中央ターミナルビル(2012年開業)。

 

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鹿児島中央駅東口。2014年にアミュプラザ鹿児島プレミアム館が建設される前は、この場所に大階段があり、鹿児島中央駅の大きな特徴となっていた。

 

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プレミアム館と従来棟の間はイベントスペースになっていた。

 

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路線バスターミナル。

 

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アミュプラザ鹿児島と交通広場を挟んで向かい合う再開発ビル「キャンセビル」。1999年に当時の西鹿児島駅周辺で初の本格的な大型商業施設である「ダイエー西鹿児島駅前店」として開業し、その後駅名変更による店名変更やダイエーからイオンへの店舗譲渡などを経て現在は「イオン鹿児島中央店」となった。見た目はなんとなく古そうだがまだ開店から21年しか経っておらず、鹿児島中央の商業集積がいかに近年になり急速に形成されたのかがわかる。

 

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駅前からまっすぐ東方面へ延びる「ナポリ通り」。いわさきバスが爆走してやってくるロングストレートな街路。

 

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イオンとナポリ通りを挟んで南側にある「鹿児島中央ターミナルビル」。南国日本生命ビルを南国殖産が2012年に建て替えたもので、上層部にはソラリア西鉄ホテル鹿児島が進出したほか、1Fに鹿児島に乗り入れる高速バスを集約した「南国交通バスセンター」が設けられた。南国殖産は南側の隣地にも「南国センタービル」というビルを2009年に竣工させており、その西側隣地は先述した南国殖産も参画する再開発エリアとなる。

「南国センタービル」と再開発ビル、そしてアミュプラザ鹿児島は歩行者デッキで接続される予定となっており、一帯はさしずめ「南国殖産銀座」の様相を呈しそうだ。

 

 

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鹿児島中央ターミナルビル」に話を戻すと、この立地であれば熊本桜町のようにバスターミナル併設の本格的な商業施設にしてもよさそうなものだが、建て替え前のビルの性格もあってか銀行や保険会社がメインのオフィスビルにとどまる。鹿児島中央駅からの案内も非常に少なく、再開発のデッキもなぜかこのビルまでは伸びてこない。バスターミナル施設も裏手にあり、とにかくわかりづらい場所にあるという印象が強い。

 

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路面電車は交通広場を南北に縦断しており、写真の方向(北東側)へ進んでいくと1~2kmほどの距離で天文館金生町の方面となる。

 

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交通広場の北側は雑居ビルやマンションが立ち並ぶ。

 

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鹿児島中央駅周辺はいまだ「アミュ一強」の雰囲気があり、せっかくの商業集積地としてのポテンシャルが周囲全体に広がりにくい印象がある。もっともこれは鹿児島に限らず「JR九州の駅ビル戦略」全体が抱える課題であるように思う。

 

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一方でこの課題はJR九州だけの責任ではないだろう。前回紹介した天文館もそうだが、九州の都市はいずれも駅前とは別に歴史的な商業中心地を持ち、力のある地場百貨店も多い。

 

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そうした地域経済全体の絶妙なバランスの中で、なかなか既存の市街地にダメージを与える駅前地区への投資はしづらい。というのが本音のところなのだろうと思う。

 

今回行われている再開発が、そうした状況に一つ風穴を開け、鹿児島の商業に新しい可能性をもたらしてくれるかもしれない。鹿児島中央駅周辺はまだまだポテンシャルを秘めている。ともいえそうだ。

 

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 さて、次はどこへ向かいましょうか…