SHORAKUSHA

終わりがないフィルムのように続く、ある風景の備忘録

お見せしましょう。文化の日の出を。-イオンモール日の出

東京にだってイオンモールはある。

これはむしろ地方の方々が驚かれるのではないかと思う。安心してほしい。東京にもイオンモールはある。どうか安心してほしい。我々はイオンのある同じ星の下で暮らしている。

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細かい造作を見るとなかなかに「遊んでいる」モールである

イオンモール日の出は、東京都西多摩郡日の出町というところにある。そもそも日の出町はどこか?という問題が大多数の方々の頭には浮かぶだろう。日の出町は東京の西郊にある、非常に説明のしづらい町である。よくわからない人は青梅とか八王子とかがある辺りと思えばいい。あきる野市に半分埋もれるようにある町だが、ごみの最終処分場という七面倒な役割を引き受けてくれている町であるので、都民にとっては足を向けて寝られる町ではない。

 

そもそものイオンモール日の出もほぼあきる野市という立地で、感覚的には「イオンモールあきる野」とでも名付けられてしまいそうな勢いである。それでもみんな「日の出のイオンモール」って呼んでくれるので、日の出町の知名度向上の観点からも、名前というものは絶大なのだ。

開業は2007年。商圏は自動車30分圏で40万人の人口を想定しているらしい。だいたい西多摩地区と八王子市北部といったところだろうか。ただ奥多摩からくるかは非常にアヤシイ(谷違いで行きづらい)。

規模はふつうのイオンモールだが、施設の構造がよくある「く」の字型ではなく、真っ直ぐなので逆に小さく見える不思議。わたしはすっかり規模小さめのイオンモールだと思っていたが、数字を拾ってみると商業施設面積だけでも73,447㎡もあるらしい(これはイオンモールのなかでも中の上くらいである)。おそるべし。

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マイカルの息吹を感じる独特の角処理。このRは間違いなくフェティシズムのそれである。

核店舗は「イオン日の出店」だが、開業時はイオン傘下に入ったのちのマイカルによる「日の出サティ」であった。これがイオンモール日の出最大の特徴であろう。よく見てみると、ジャスコ→イオンには見られない、細かい空間の遊びや温かさと少しばかりの雑然さが売り場にはある。ただその温かさが売り場のダサさに繋がるのがマイカルのご愛嬌であったが、当時のイオンの理性的な空間設計が少しミックスされて、日の出サティは非常に居心地がいい売り場になった。この路線でマイカルが存続してほしかったなあと思うばかり。

建物を眺めてみると、気になる「角のR」が見える。出店時はすでにイオンの傘下にあったが、ここにもマイカルの矜持を感じる部分である。このRはイオンには出せない。

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正面にはバスターミナルがあり、秋川、武蔵五日市、福生、河辺からバスが来る。そういえば一時期八王子から遠路はるばるやってくる「レジャー・ショッピングライナー」もあったが「ライナー」のくせに時間がかかりすぎて大減便になっている。

このモール、非常に慎ましさがある。よくあるイオンモールはジャンキー(?)なテナントを並べて「どうだこれが東京だわたしが教えてやるぞ」みたいな、おせっかいな鬱陶しさがあったりするものだが、不思議とイオンモール日の出にはそれが感じられない。準核テナントの一つである未来屋書店も大きく非常に堅実なしつらえ(しかし気持ちの良い空間である)で、スタバを隣接させブックカフェ感で少しだけ洒落る。かと思えばスタバの逆サイドにはTSUTAYAが入っていて、とても「分かっている」。土日におめかししていかなくても大丈夫。しかしなかなか、チープじゃない。なかなかないところに、このモールは着地している。

きっと文化が溢れる大都会東京では(いくら西多摩の日の出町とはいえ)ある意味東京の「あたりまえ」を改めてケイモウしても仕方ないのだ。「○○市初出店!」な文化を暴力的に持ち込むのではなくて、その土地の文化を照らし、すこしだけアップグレードする…そんな縁の下的な慎ましさと温かさが、このモールにはある。

モールの開業は、文化の日の出であった。

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      初々しささえ感じるこのやさしさ、忘れないでほしい(最近あまり見ない)

 

訪問日:2016年11月3日

 

イオンモール日の出】

住所:東京都西多摩郡日の出町大字平井字三吉野桜木237-3(長い)

延床面積:124,626㎡(うち商業施設面積73,447㎡)

営業時間:9:00~22:00(イオン日の出店。モール専門店街は21時まで。食品は23時まで)

駐車場台数:3,650台

本屋さん:未来屋書店日の出店(専門店街。通路広く棚の流れは若干わかりにくいが過ごしやすい)

略史:2007年11月 日の出サティを核として開業

   2011年3月   (株)マイカルがイオンリテール(株)と合併し日の出サティは「イオン日の出店」に

八王子に現れた「東京チェルシーテラス」-ガレリア・ユギ(イトーヨーカドー南大沢店)

 

-生活上質ヶ丘東京チェルシーテラス(柚木そごう1992年開業時ストアコンセプト)

 

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新宿から電車で40分。トンネルをいくつか超えた先の多摩ニュータウン京王相模原線の南大沢駅前にあるイトーヨーカドー南大沢店。

わたしの商業施設趣味の原点のひとつであり、非常に思い入れの深い施設である。語りだすと長くなるので語らない。

正面から見上げてみれば、壁のような存在感がある。ワンフロアもそれなりの規模で5層。この規模感のイトーヨーカドーは意外と少ない。お店は結構にぎわっていて、同じく駅前にあるアウトレットモール「三井アウトレットパーク多摩南大沢」のおかげで、広域の集客の恩恵にあずかっていそうである。

 

いまとなっては一介のイトーヨーカドーだけれど、数奇の歴史をたどってきた店舗でもある。もともとはダイエー南大沢店、さらにさかのぼると柚木そごうと忠実屋フランツ南大沢店として1992年に開業した店舗なのである。

この箱を折半して入居していたようで、おまけに当時は正面のガラス張りの部分が中にくりぬく様に開口しており、上から見るとコの字型の建物で、正面右側にそごう、左側に忠実屋が入居していた(増築が完璧でイメージがつかない)。店内を歩いていると、吹き抜け部に向かい合うようにしてエレベータが両サイドに設置されていて、これは確かに1つの施設として作られたつくりではない。そごう側のエレベータはキンピカのそごう仕様が残されており一見の価値がある。ヨーカドーの売り場とのミスマッチを楽しみたい。

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この部分は増築なんだとかで…言われないと分からない完璧な仕事

冒頭の一文は柚木そごうにつけられたストアコンセプトだそうで、口走るだけでなんだか恥ずかしい。特に「生活上質ヶ丘」のあたり。八王子は東京なのかどうかも危ぶまれる昨今、ロンドンの高級住宅地「チェルシー」まで持ち出せる当時の余裕たるや、うらやましい。

バブリーで羽振りーのいい話だが、1992年というと南大沢はまだ土ぼこり舞う開発途上。肝心のバブリーもはじけ、そごうは東2駅隣に多摩そごう、同じ市内には八王子そごう、西2駅隣の橋本にも出店の話を取り付けていたから、明らかにオーバーストアで、2年というそごう史上最短営業期間の不名誉とともに1994年に柚木そごうが撤退。

相棒であったスーパー「忠実屋フランツ」も1994年にダイエーに買収となり、ダイエー南大沢店となるも、こちらもサッパリだったようで翌年には撤退。しばらく廃墟ビル然としていたそう。

いまのイトーヨーカドーは1998年開業。このころにはようやく足元人口が伸びてきて、以後現在まで続く。

 

高貴な生まれも、不遇の人生で没落した貴族のようだ。彼は庶民派にはなったけれど、そういう人生もまたアリだと。そんな声がする。

 

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今や地域の顔になったが、南大沢の地にそごうがあったことなど、住民のどれだけが知っているだろうか。

 

訪問日:2016年10月31日(他多数)

 

【ガレリア・ユギ(イトーヨーカドー南大沢店)】

所在地:東京都八王子市南大沢2-28-1

延床面積:42,000㎡

基本営業時間:10:00~22:00

駐車場台数:741台

本屋さん:文教堂書店南大沢店(専門店街。アニメガというアニメショップ併設)

略史:1992年6月 柚木そごう・忠実屋フランツ南大沢店を核とし開業

   1994年3月 忠実屋がダイエーと合併し「ダイエー南大沢店(店番:0597)」に

   1994年10月  柚木そごうが閉店

   1995年2月 ダイエー南大沢店が閉店。専門店街のみ存続。

   1998年2月 イトーヨーカドー南大沢店(店番:186)開業

オープニング

このブログは、かぜみなが訪ね歩いてきた商業施設を、個人的主観のもとぺたぺたと写真と感想を貼り付けていく場です。

 

いままで見たまま、撮ったままで終わっていた商業施設をより大切に捉え、記録することで自らの蓄えとなればいいなあという期待と、それを体系的に紹介するというのも、また意味のあることなのかなと思いがあり、始めてみようと思います。

 

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以後、よろしくお願いいたします。

 

問うに落ちぬが、書くに落ちる。この場でならウッカリした素直な感想も許されるかな。とそんな期待がこの珍妙なブログ名には込められていたりします。ぜひ今後もご愛顧くださいませ。

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さあ、新しい物語をはじめましょう。